思い出すことなど
もう25年くらい前のことです
インターネットが流行りだしたころで
スマホもXとかフェイスブックとかそれ以外とかのsnsなんかも当然に全然なくて
ネットで交流って言ったら話題を中心に集まったりする掲示板でした
私とその人はある掲示板で仲良くなりました
その人のハンドルネームから略称を作って、シーヌさんと呼んでいました
映画の話題とかでよくお話をさせてもらったのを覚えています
お互いにトピックスを立ててもっていて
毎日ログインするたびになにかしら投稿があったりしていました
私は当時大学生で学校とバイトが終わるとバイト先に近かったコミュニティホールで
無料で貸し出していたパソコンからアクセスしていました
台風が来たときだったかな
台風一家っていうタイトルでずいぶんふざけた文章を投稿したのですが
それをシーヌさんが大層喜んでくれました
シーヌさんは映画の話題を掲載することが多く
私もそれを参考にして映画館に頻繁に足を向けていた記憶があります
当時は千と千尋の神隠しとかパッチアダムスとかAIとかの話題で話が盛り上がったことがありました
そんな交流が続く中で私は入院したり作業所を探すようになったり、現実での人との交流がさらに盛んになっていって
次第にインターネットから離れていきました
シーヌさんのことも少しずつ忘れていきました
そして15年くらい前だったかな
私が結婚を考え始めて独立をしようとしていたとき、突然シーヌさんから
手紙と小包が届きました
「アス君 お元気ですか」のようなことが書かれていた手紙と
「もう要らないので~」と一緒に入っていたシーヌさんのお気に入りなのか
あるいはシーヌさんのお人柄がうかがえるような
小物がいくつか送られてきました
私は返事を書こうかどうかと考えるよりも、遠い過去から届いたものとして
現在を生きる私とは決別したものとしてしか扱えず
ちゃんと返事ができませんでした
もちろん、掲示板はとっくに閉鎖されたりしていました
追伸みたいにシーヌさんは「私はF県に引っ越しました」
と書いていました
なんで返事を書かなかったのか後悔することがあります
せめてこんにちはとかお元気ですかとか懐かしいですね
の一言があればシーヌさんがどれだけ喜んだことだろうと
その後数年して東日本大震災が発生しました
シーヌさんの行方はその後全く音信もなくわからないです
無事でいるとは信じているものの、今でも思い出すのが
いいことのような気もするし少し悲しい色を含んでいる気もします
シーヌさんお元気ですか
アスは性懲りもなくまだインターネットで遊ぶ日々を続けています
病気になった時に心配して送っていただいた物は私の思い出と共にあります
いくつかの引っ越しの中で失われていった記憶もあるけど
シーヌさんは私にとって最初にできた姉であり
信頼できる友人の一人です
いつかシーヌさんと、どこかで再会できる日を楽しみにしながら毎日を送り続けています